一人一人が営業マン①

私の20代の頃ですが、真夜中にアイシン様から電話がきました。
「ちょっとものがないけどもってきてくれない?」
という電話でした。
「はい、分かりました!」
と私は返事をすると、夜中でもリフトに乗って製品を準備し、夜勤をしているお客様の元へ運びました。そのようなことが1週間に3回くらいありましたが、お客様からは特にお礼もありませんでした。
ある日、深夜2時くらいに電話が来た際に、
「これってうちのミスですかね?」
とつい言ってしまいました。
「お前はどういうヤツだ!俺だったらなぁ、“はい分かりました”と言うぞ!」
と受話器から聞こえるやいなや、電話が切られました。
その言葉がずっと頭に残り、考えました。お客様も困っている中で、藤塗装を頼りにしてくれて、わざわざ電話してくれたのだと思い直すようになりました。そこで、「どうしたらお客様の役に立つかと常に考え、相手の立場に立って対応する」ことを心に決めました。その真夜中の一本の電話が私の営業マインドに火をつけたのです。
電話一本、聞き方一つでお客様は不満を感じてしまいます。さらに、その不満がいろんなお客様に語りつがれていくと、「藤塗装は対応が悪い」と評判となり、どのお客様からも二度と仕事をもらえないようになってしまいます。そういう事を避けるために一人一人が営業マンを心がけることが必要です。
そして、お客様との関わりがないと感じている業務一つ一つも、実はお客様にとって、とても意味のあるものだということです。
例えば、製造の現場でもなく、お客様に接する機会の少ない経理の仕事はどうでしょうか。伝票処理をすることは、お金を通してお客様と信頼関係を築くことです。誤った金額で請求したり、期日通りに処理できなければ、信用はなくなり、塗装以外の理由で仕事をなくしてしまいます。
逆に、一つ一つの伝票処理が確実で、お客様の間違いや、特急の要望にも誠実に対応すれば、良い評判となり、その評判が他の会社にも伝われば、自然と新しい仕事につながり、経理業務を通して営業することができるのです。
つまり、一人一人が営業マンの心で一つ一つの仕事に取り組めば、お客様自体が藤塗装の営業マンとなってくれるのです。今の時代は、SNSなどの口コミで評価が広がりやすく情報浸透するようになりました。一つ一つの仕事で、一人でも多くのお客様から“いいね”の評価をもらい、藤塗装のファンになってもらいましょう。
以前にもお伝えしましたが、「人生・仕事の結果=考え方x熱意x能力」です。従業員の一人一人の考え方が大切なのです。その考え方とは営業という事からいうと、お客様の立場に立って仕事に取り組む姿勢そのものです。常にどうしたらお客様に役に立つかを考え行動する力です。
さらに、現在の社会は、お客様が本当に喜ぶモノやサービスを提供しなければ、企業は生き残っていけません。一人一人が営業マンだと言いましたが、常にお客様の笑顔を想像して全従業員が仕事をすることが大切です。
私たち製造業は、直接的に目の前にお客様がいるわけではありませんが、無観客の中でも、ステージの上でお客様の姿を想像して演奏するように仕事をしていきましょう。

